「別物語」は作家をつくる、仕事をつくる

本プロジェクトは、作品「別物語」を社会的に広く行ってもらうためのものです。
「別物語」のコンセプトである、読者の感受性に注目した「感受行為」を体験してもらいます。
この体験は、本さえあれば世界中の誰もが簡単に行うことができ、多様化する可能性を持っています。
私たちは、参加者が自身の美的感受性に触れ、世界の各地で「別物語作家」として「藝」を創り始める
ことを期待し、想像しています。

絵画は、古代ものごとを伝える手段であったが、今日では誰しもが疑いなく芸術として捉えている
さまざまな「もの」は時代によって大きな振り幅を持っているのである
私たちは、「物語」へも絵画のような振り幅を与えようと考えた
「別物語」の手法が生活の術となり、
近未来社会では「別物語」作家がふつうの仕事となってもよいのではないだろうか


「別物語」作家をつくるプロジェクト

 

参加方法

 一:参加条件をご確認の上、お問い合わせフォームよりお申し込み →こちらから
 二:制作の詳細を記したPDF ファイルをお送りします
 三:制作後、撮影用に作品を郵送(撮影後、返却致します)

参加者条件

プロジェクトの趣旨にもとづき、以下の条件がございます

 一:制作に使用できる本をお持ちの方(どのような本でも良いですが、裁断をします)
 二:制作を最後まで責任をもって行える方
 三:ホームページや展覧会での、作品や参加者のお名前などの使用をご了解いただける方






手順

一:本から物語1話分を1ページずつ切り取っていきます

二:1行ごとにカッターで切れ込みを入れていきます
 *完全に切り分けず、文の先頭部分は残し櫛状にします
 *編み込む際の土台となるため、土台側から気に入った1行を選べません
  予め、気に入った1行がないものを土台に選んでください

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三:別のページを次は1行ごとに完全に切り分けていきます

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四:切り取った1行の集まりを、気に入ったもの・そうでないものに分類していきます
 *最終的に気に入った1行をひとつだけ選び出してください

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五:選んだ1行以外を土台に編み込んでいきます

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六:1ページ単位でパーツとして完成させます
  これをページごとに作成していき、1話分のパーツを全てつなげます

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七:各パーツの気に入った1行からひとつだけ選び、残りも編み込みます
 最終的に選んだ1行は編み込まずに、文が見えるように両端をひっかけて完成です

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物語とは「もの」を「かたる」ことである
 「もの―かたり」は、古代では出来事や事件(こと)を語る「ことのかたりごと」とは区別されていた。「もの」とは精霊や鬼など不思議な霊力を持つものを指し、「もの―かたり」では、そうした不思議な世界が描かれてきたのである。現代においても、作者は「もの―かたり」によって、読者と関係性を持っている。したがって読者にとっては、「もの―かたり」を通して作者の意図を解釈することよりも、「もの―かたり」そのものと向き合い、読者自身の感受性との関係の中にこそより根源的な姿があるのではないだろうか。 こうした着想を私たちなりに確かめ、答えを求めるべく私たちはひとつの感受行為を行った。

 具体的には、家にあった物語の描かれた一冊の本を、ストーリーは追わずに文章ごとに切り分けた。そしてひとつひとつの文章と対峙するように、切り分けられた無数の文章群の中から気に入った文章を1つ選び、選ばなかった残りの文章はすべて編み込んでいった。編み込まれた文章は、単体の文字へと分断され、意味から解放されて行くテクスチャーとしてのテクストは、織り込まれることによって、逆にテクスチャーから解放されるのである。そしてついには、無数の意味をなさない文字群を下地とし、その上に自ら選んだひとつの文章のみが浮かび上がる。物語に対するこうした行為は、読者の直感的な感受性のみによって向き合うものであり、そこには作者の意図を追い求める解釈行為は行われない。

 読者が物語から得るものは、たったひとつの文章とそこに潜む読者の潜在的な感覚であり、読者の感受を結晶化したものである。感受行為によって結晶化された、ひとつの文章と無数の編み込まれた文字は、「もの―かたり」と いう鏡によって読者を映し出した「別物語」ではないだろうか。

作品「別物語」より