背守りの構造を使った世代継承と物語

糸は長命縷の類なるべし、今小児の衣の背に守り縫とて付る是にや(『嬉遊笑覧』巻八)

古来より邪気は背中から侵入すると語られていた。
子どもの着物には縫い目がなかったため、昔の人々は背中に縫い「目」をつけて、邪気の侵入を防ごうと考えたのである。
「背守り」とは、大人たちが子どもの健康を願った祈りであった。
私たちは、むかし祖父が使っていた着物の背中に、「背守り」を縫いつけることにした。祖父と共有した年月を想い起こし、祖父から享受した健康への祈りを想像しながら、縫い目を入れていった。縫いつけられた「背守り」は、やがて私たちの子どもへの祈りの刺繍となり、受け継がれていく。私たちは、前の世代から託された存在であり、また次世代に託す存在でもある。換言すれば、それは前の世代には託した存在がおり、未来にはまだ見ぬ託す存在がいるのである。
私たちは繋がっている。「背守り」は、その繋がりを可視化させる「糸」のようなものである。







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