百度参り

 人々は、百度石と本堂を百度も往復した。

 平安時代にはすでに行われていた百度参りという民間信仰。心願を成就するためには、無心を獲得し、また一度では気付かないような些細さに辿り着くことが肝心だと考えたのだ。大きく吊されたこの房は、百度という見えない道程が正確な距離として可視化される。反復行為による「無心」という無形遺産は、いつしか形ある遺産として指定される日がくるのかもしれない。